はじめに
乳幼児期の子どもは、身体機能や認知能力の発達段階に応じて、事故のリスクが異なります。保育者としては、年齢に応じた安全対策と、それをふまえた保育の工夫が不可欠です。本記事では、年齢別の事故の傾向とその予防策、保育のポイントについて紹介します。
0歳児【前期】|寝返り・ずりばい期は「誤飲」「窒息」「転落」に注意
主な事故のリスク
- 誤飲:なんでも口に入れて確かめるため、小さな物は危険
- 窒息:寝具やクッション、おもちゃが口や鼻を塞ぐ可能性
- 転落:寝返りで思わぬ位置に移動し、ベッドやソファから落ちることも
予防と保育の工夫
- 床に置かれたものを常に点検し、小さな物は即撤去
- 寝具やぬいぐるみは顔を覆わない安全設計のものを選ぶ
- 寝かせる場所の周囲に柵やクッションを設ける
- 活動の合間も常に目を離さず、視界の中に入れておく
0歳児【後期】|つかまり立ち・伝い歩き期は「転倒」「頭部打撲」「家具の角」に注意
主な事故のリスク
- 転倒・転落:不安定な足元や勢い余った動作での転倒
- 頭部の打撲:転倒時に頭を打ちやすく、特に注意が必要
- 家具との接触:角や引き出しに手や頭をぶつける
予防と保育の工夫
- 家具の角にクッションを貼るなどの安全対策
- 手押し車など、安全性の高い歩行補助玩具を活用
- 床に転倒時の衝撃を和らげるマットを敷く
- 歩きやすい服装・滑りにくい靴下を選ぶ
1歳前後の移行期|「できるようになったこと」が事故のきっかけに
この時期の特徴
0歳後期〜1歳初期にかけては、「つたい歩き」から「ひとり歩き」へと移行し、行動範囲が一気に広がります。「つかまりながらできていたことが、手を離してでもできるようになる」時期だからこそ、できるようになったから大丈夫、と思い込むことがリスクに直結します。
主な事故のリスク
- 転落:自力で椅子によじ登ろうとする
- 挟み:大人の真似をして扉や引き出しを開ける
- 転倒:好奇心のままに、段差や階段を一気に進もうとする
予防と工夫
- 「できるようになったから任せる」ではなく、段階的にサポートを変えていく
- 真似してほしくない行動は見せない・届かせない
- 挑戦を止めるのではなく、安全な方法に導く声かけ
- 成長に伴う行動変化をチームで共有し、環境も見直す
1歳児|歩き始めの探索期は「転倒」「ぶつかり」「やけど」に注意
主な事故のリスク
- 転倒・つまずき:不安定な歩行による
- やけど・感電:コンセントや調理器具への興味
- ぶつかり事故:角や壁に頭をぶつける
予防と工夫
- 家具の角にコーナーガードをつける
- 歩行エリアはマットなどでクッション性を確保
- 熱源やコード類には近づけない環境整備
- 歩き回る中での“見守り”を徹底する
2歳児|好奇心旺盛で行動範囲が広がる時期は「誤飲」「水回りの事故」に注意
主な事故のリスク
- 誤飲:小さなパーツや食べ物の丸飲み
- 水回り事故:洗面台やトイレ、お風呂場への侵入
- 高所からの落下:登れるようになる時期
予防と工夫
- 玩具のサイズ・強度を年齢に合わせる
- トイレや水場のドアにはチャイルドロックを
- 登ってほしくない場所には物を置かない
- “自分でやりたい”気持ちを尊重しつつ、環境で制御
3歳児|集団生活が始まり、トラブルや事故の「巻き込み」に注意
主な事故のリスク
- 友達とのぶつかり事故・けんか
- 遊具からの落下・転倒
- 走って転ぶ・滑る
予防と工夫
- 遊びの前にルールをしっかり伝える
- 衝突しやすい遊具まわりにはマットを設置
- 危険な行動をした子には理由を説明して伝える
- “ちょうどよい距離”での見守り
4~5歳児|自立心が育ち、過信による事故に注意
主な事故のリスク
- 「自分でできる」と思って無理をする
- 高いところへのチャレンジでの落下
- 集団遊びでの勢い余った衝突やけが
予防と工夫
- 子どもと一緒にリスクを言語化して考える
- 挑戦できる環境と安全のバランスをとる
- 大人の助けが必要な場面を見極めて伝える
- 成功体験と安全行動をセットで育てる
保育者として心がけたい共通ポイント
- 年齢だけでなく、個々の発達に合わせた安全対策を
- 「してはいけない」ではなく、「どうすれば安全か」を伝える
- 家庭との連携で事故リスクを共有する
- 事故後の対応マニュアルを整備・訓練しておく
まとめ|年齢に応じた備えが、子どもを守る力になる
事故は一瞬の隙に起こりますが、日々の備えや環境の工夫でリスクは大きく下げられます。子どもたちの発達を理解し、それに応じた安全な環境と保育の関わり方を心がけることで、安心して過ごせる園づくりにつながります。
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